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2006年 10月 07日
ある日、とてもひょんなことから、女子高生3人+三十路を終えた女性1人と共に、エルサレムの新市街をプラプラすることとなった。
その女子高生らは、よく分からんが、ユダヤの宗教的な女子高とやらに通っている。宗教的な学校、と言っても、制服は普通の女子高っぽくて、俗にイメージするような 「ユダヤです!」 てな出で立ちではない。それどころか、一人の子のカバンには、中学生の男の子がするような品のよろしくない落書きがびっしり書き込まれていたり、ちょいとアナーキーな感じのアクセサリーをいくつも身に着けていたりで、とても宗教的には見えない。そんなカッコで学校に行っていいのか、と聞くと、「かまわない」 とのこと。一体どこら辺が宗教的な学校なのか、聞いてみたい。 まずは、雑貨屋さんへ。ゲバラのTシャツとか、アジア風の雑貨とか、キャラクターグッズとかが置いている店。彼女らくらいの年代の子は、こういうの好きなんだろうなあ。あれやこれや、楽しそうに選んでいる。鉄の鋲のついた腕輪なぞを、「カワイイ」と。そうですか。なかなか買うものが決まらない。私は暇なので、通りに出て、道行く人を観察したり、撮影したり。しばしの後、店に戻ってみても、まだキャッキャやってる。女性の買い物に付き合うというのも、大変だ。 その後、カフェへ。付き合ってる男がいるだのいないだの。その男は背が高いだの、カッコイイだの。ちなみに、宗教的な学校なので、色恋は校則で(?)禁止されているとのこと。 ふと、「この後、うちの宿に来ない?」 と誘ってみる。 と言っても、もちろんいやらしい意味ではなくて、宿にはなかなか居心地の良いサロンがあり、無料のコーヒー紅茶もあり、いろいろと奇妙な人々もいるし、楽しかろう、と思ってのお誘い。が、3人に、「あんなトコ、行くわけなかろうが!」という反応をされてしまった。 あんなトコ、というのは、別に宿自体がどうこう、ではなくて、(その宿がある)アラブ人地区になぞ、ということだ。3人のうちの一人、Mちゃんの母親は私の友人なのだけど、実はMちゃんは以前、変わり者の母親に連れられて、一度その宿に来たことがある。Mちゃんはその時のことを、「本当に怖かった」と言っていた。 何が怖いのかと言うと、「アラブ人が怖い」 のだ。 ユダヤ人の私があんなところに行ったら、アラブ人に 「襲われる」「殺される」「誘拐される」・・・最初にMちゃんにその話を聞いたときには、真顔でおちゃめなコトを言う娘だなあ、と思っていたのだけれども、これ、本気なのであった。彼女らにとって、その地区は、「危険極まりない地区」という認識なのだ。 宿は、このカフェからは歩いて10分と離れていない。が、彼女らにとっては、そこにたどり着くまでの間に、見えない一線がビシッと引かれていて、その先は決して足を踏み入れてはいけないデンジャラス・ゾーンなのだ。 そして、多くの大人にとっても、そこはできることなら近づきたくない場所、という認識のようだ。 実際には、「変わり者」のユダヤ人をはじめ、ここを訪れるユダヤ人も少なくはないが、だからと言って、もちろん何が起こるわけでもない。旅行者も、「危険地帯」 などという認識は微塵も持っていないし、持つ必要はない。 そして、この時話しているのは、同じイスラエル国内、エルサレムの「アラブ人地区」の話だ。ましてお隣パレスチナ自治区に住むパレスチナ人などは、彼女らにとっては 「関わるなど、まるで論外、もってのほか、彼ら皆テロリスト」てな存在だ。 イスラエルとパレスチナ自治区の間には、文字通り、両者を分離する「壁」があるし、そもそも、イスラエル国民は、パレスチナ自治区の市街地に立ち入ることはイスラエルの法で禁じられている。そしてそれに加え、パレスチナ人に対する、彼らの強烈な偏見、恐怖が、さらにイスラエルのユダヤ人を、パレスチナ人との接触から遠ざけている。そしてその結果、パレスチナ人は「見えない存在」 となり、そのことがまた、偏見と恐怖を強めていくことになる。 Mちゃんは以前この宿を訪れた時に、「アラブ人の」従業員の青年と会話をしている。そして、「彼のような気のいいアラブ人もいる!!」 という、世紀の大発見をした。それは、大いに彼女の世界観を揺さぶり、彼女の中に、わずかではあるが、「ひょっとしたら・・・」と疑問を持つ余地を生んでいるようだ。しかし、未だ、彼女の住む社会の「常識」を完全に疑いきることはできない。それは、そうそう簡単なことではないのだ。 いわんや、他の二人は、そういう経験が今までのところ、なかったのだろう、「アラブ人は大嫌い。あんなトコ、行く必要はない」と、まるで取り付く島もない。アラブ人の何が嫌いなのかと聞くと、「野蛮で下品で目つきが悪い」とのこと。「それって、男のこと? じゃあ、アラブの女性は?」 と聞くと、「もっと嫌い」 ぐぬぬ・・・。 まあ、まだ15歳、生意気盛りなので、こういう挑発的なことを言っているのかもしれない。がぜん、連れて行きたくなる。「でもさ、今までアラブの知り合いがいなかったんでしょ? 宿の従業員のイケメン・アラブ青年と、会ってみたくない? もっとも、恋に落ちないように注意はしつつ」 と、過剰なセールストークをしてみると、一瞬、微妙に反応したようにも見えたが、すぐに、「要は、アラブのことなんか、どうでもいいのよ」と。 「彼らは彼らでよろしくやればいいし、私たちは私たちでやりたいようにやるから」とのこと。 うーむ。「彼らは彼らでよろしく」させることを、数十年にわたる軍事占領で阻み続けているのは、君らの祖国なんだよね。イスラエル人の君にとって、それは 「どうでもいい」 という問題ではないんだよ。 ・・・なーんてことを言うと、説教おじさんみたいになってしまうし、多分そんなこと言ってもピンとこないだろうと思われ、それ以上は言わないことにして、その後は当たり障りのない話をした。 強烈な差別意識、そして自分たちの国が行っている暴力への、驚くほどの無自覚、無関心。これは、私が見聞きした限りで言えば、彼女らのようなまだ世間を知らない「若い子」に限ったことではない。乱暴に言ってしまえば、老若男女が広く共有する、言わばこの国の(アラブ住民以外の)常識と言っていいだろう。 当然と言えば当然だが、子供は、大人のしていることを見て、物事を学んでいくのだ。子供、若者に現れていることは、その社会の反映だ。 バナナジュースをすすりつつ、先日会ったイスラエル人が言っていたことを思い出した。「考えてもみろ、今一緒に夕食をとっている自分たちの愛する息子や夫や父親が、今日、占領地の軍務で無実のパレスチナ人にひどい仕打ちをしてきた、撃ち殺してきた・・・なんて誰が信じたがるか? それを受け入れることは、我々にとって、本当に難しいことなんだよ」 でも、翻って自分の国を見てみても、ある部分では、同じようなことが言えるのかもな、とも思う。 彼女らに対して、「どうでもいい、という問題ではない」 などと偉そうなことを思ったけれども、実は、そういう 「どうでもよくない問題」は、日本にも姿形を変えて、無数に存在しているのだろう。そして、その多くは、彼らと同じく、自分たちにはよく見えていなくて、その結果、「どうでもいい」と思っていることだろう。 そのことを認めるのは、イスラエル人の 「どうでも良さ」 が生み出す怖さを実感しているだけに、とても居心地の悪い気分だ。そりゃ、外から「無自覚な占領者」を批判することは簡単だけども、その彼らの無自覚さと同じものが、自分の中にも存在しているというのを認めることは、面倒くさいし、居心地が悪い。 でも、それは、特に今の時代には、なにやら決定的に大切なことのような気がしている。その私の無自覚や無関心は、先の女子高生軍団、あるいは多くのイスラエル人の、パレスチナへの暴力に対する無自覚・無関心と、きっと根っこのところではつながっているんだろうから。 10代の若いエキスを吸って元気になるつもりだったのだが、おかしな話になってしまい、しかもこの地の問題の根深さをまたしても垣間見てしまって、その日はなんだか疲れてしまった。 ところで、私はいつかMちゃんをヨルダン川西岸に連れ出し、気のいいパレスチナの友人らを紹介しようと企んでいる。
by lusin
| 2006-10-07 08:08
| パレスチナ/イスラエル
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